月物語 ~黒き者たちの宴~



彩夏の右手に生暖かいものが伝ってきた。



雉院は初め何が起きたの理解できなかった。



腹に突き上げられるような感触を自覚し、ぎこちなく腹を見る。



彩夏に握られた護身用の短刀が、礼の腹に突き刺さっていた。



皆一瞬何が起こったのかわからず、固まっていた。



「何をする…」



雉院は彩夏にもたれかかり、声を絞り出した。



「もういいのよ。」



彩夏は優しく礼の頬を撫でた。



血が頬にべっとりとつく。



一瞬礼の身体が揺れた。


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