もしも世界が変わるなら

買い出しから帰った二人は、声を揃えてただいまと玄関を開けて小さく笑い合い、そのまま買ってきた食材をキッチンへと運びました。人参、ジャガイモ…各種材料をしっかり買い揃えてそして一旦床に腰を下ろしました。

「久々に来たけど、本当一人だと片付けないよねー」

彼女は笑って言いました。すぐさま彼は

「失礼な。ものが多いだけだよ」

彼はそう切り返しましたが、あまり説得力のある部屋ではありませんでした。けれど、その割合的に、衣服や生活用品が多く、彼女の興味を惹きませんでした。

「はいはい、片付けられない人は皆決まってそういうのよ。…それじゃあカレー作るから、貴方は片付けでもして待っていて。」

彼女の皮肉さえも、今の彼には心地よく響きます。そうして各々自分の作業を始めました。



「はい、お待たせ。カレー、出来たよ」

いつの間にか片付けに没頭していた彼はその声で我に返ると、いい匂いが部屋中を満たしていることを認識しました。

「おぉ、もう出来たんだ。すっかり片付けに集中していたよ」

「ふふ、えらいえらい、じゃあこのカレーは頑張ったご褒美ってことで。」

カレーを二人分テーブルに並べて向かい側に座る彼女の笑顔は、もう先程までのぎこちない笑顔などではなく、いつもの、彼女の優しい笑顔でした。

彼女の作るカレーが、彼は好きでした。
なによりも、彼女を彼は愛していました。


それを今、思い出したのです。
< 21 / 21 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

カッシーニの間隙

総文字数/0

恋愛(純愛)0ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
未編集
メランコリ

総文字数/0

恋愛(ラブコメ)0ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
未編集
:Noah's Ark

総文字数/1,818

その他8ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
黒い。 点と線は黒い。 では、私は何か。 丸でも四角でもなく。 おおよそ形を表すどんな言葉を用いても。 私は、一体。 なんなんだ。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop