雨のち晴






「うん、分かってた」




悲しそうな朱里の顔。


分かってた、なんて。


違うんだよ。


俺は、お前が好きなんだよ。


お前しかいらねえんだよ。


なあ、朱里。


俺を置いて行くなよ。





「無理だって知ってたから」




悲しいくせに、


俺に笑って見せる朱里を。


抱き締められない自分に、


腹が立って仕方なくて。





「里菜ちゃんいるのに、気持ち悪いねあたし」




「朱里」




「ごめん、本当。あたしどうかしてた」




ここでこいつを離したら、


どうなるんだろうって。


もう、無理なのかなって。


でも、全部俺が悪いって。


永遠と、ループ。







「あ、忘れて?何か、うん。もう…忘れて」





「朱里」





行くな。


俺の傍にいろ。


離れて、イカナイデ。





「本当、ごめんね」





朱里はビンゴの紙を片手に、


教室を出て行った。


朱里が、俺を好きだって。


それは事実で。


でも、丘谷に取られて。


俺はどうすることも出来なくて。


もっと早くに、


動くべきだった。


あいつのこと考えて、


行動するべきだった。


好きだって、もっと。


もっと早く言えばよかった。





「朱里っ…」





情けない俺は、


あいつの名前ばかりを呟いて。


しゃがみこんで、片手で


顔を覆って。


諦めようと思っても無理な俺は、


結局ここからまた片想いが


始まるんだ。





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