雨のち晴
「どうも」
「あ、ごめんね。わざわざ呼び出して」
2人で話したくてさ、と。
いつもの丘谷が目の前にいた。
なんやかんやあっても、
丘谷はかっこいい。
それだけは揺るがなくて。
「単刀直入に言うね」
何を言われるのか。
頭をぐるぐる回して。
「俺これまで女に本気になったこと、なかったわけ」
丘谷の言葉を聞いて。
気が抜けた。
「だけど俺、朱里に会って、本気で好きになった」
丘谷の顔に、嘘はなかった。
その真剣な瞳が真っ直ぐ俺を
捕えていて。
「藤田くんって朱里が好きじゃん」
「だったら何すか」
「やっぱ図星でしょ」
「そう…、てゆーか、は?」
この俺が。
丘谷のペースに飲まれていく。
自由人な丘谷は、
楽しそうにケラケラ笑う。
「前もこんな話したっけ」
「…はぁ」
何だ、まじで。
何が言いたい。
全然読めない、この人。
「別にこれっていう用はないんだけどさ」
「はい」
次に飛び出す言葉は。
衝撃の走る。
「朱里と別れようと思う」
言葉だった。
「別、れる?」
「そう。俺、多分朱里のこと幸せに出来てないから」
悲しそうに呟きながら、
丘谷は俺に笑顔を向ける。
俺は、何で笑えるか
不思議で仕方ない。
好きな奴を手放す気持ちが、
俺には分かるから。
「それに朱里は別の人を本気で想ってる」
「別の人?」
「それは藤田くんが、1番分かってるでしょ」
朱里が別の奴を好き。
別の奴って、誰だ?