アクアマリンの秘密【外伝】
「瑠香。」

「何だ。」

「お前がわざわざ…言いたくないことを口にして傷つく必要はない。」

「傷ついてなど…いない。」

「それでも…言って幸せになるものでもないだろう?」

「それは…そうだが…。」

「…俺がただ、未練がましい人間なだけだ。」

「…?」



雪を見つめ続けたまま、朝霧紫紀は言葉を続ける。



「本物の雪を見るのは…ヴァニティーファウンテンでフェイと対峙した時以来だな。」

「知っている。」

「…見ていたか。」

「ああ。」

「雪を見れば思い出す。どうしても。
…思い出したいことも、忘れてしまいたいことも。」

「…。」



いつになく切なそうに、そして寂しそうにそう呟く声に何も言えなくなる。
いや…元々私に掛けられる言葉などないのだ。

朝霧紫紀は守るために戦っていた。
私は…壊すために…。


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