失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
交わりと……



金井武が陽たちの前にあらわれてから二日たった頃、亜美が久しぶりに音楽室にあらわれた。


「おっはー……ってなんかあった?」


亜美は陽たちの雰囲気の変化に鋭く気が付いた。


「別になんもねぇよ」


大雅がブスッとした顔でいう。


ばかだな。そんな顔で、そんな声音で言えば、“何かありました”って言ってるようなもんだ。


「まぁ、なんでもいいけど」


怪訝そうな顔をしながらも、亜美は何も聞かず、鼻歌を口ずさみながらいつもの場所に座ろうとした。


「亜美、今日はこっちこい」


亜美が座ろうとしたのは二日前、金井武が座った場所。


あの日から陽は目に見えて機嫌が悪い。


「は?何で?」


「……昨日、大雅がソフトクリームこぼした」


なんつーいいわけだ。
理由に使われる大雅もかわいそうだが……


「なら、そっちいく。ベタベタになんのいやだし」


「拭いたし」


こんなときに発揮されるチームワーク。


ソフトクリームなんかこぼしてない。


陽はただ、亜美をあいつの座った場所と同じ場所に座らせたくなかっただけ。





< 231 / 509 >

この作品をシェア

pagetop