銀の蒼空
 
 
 
『スプンタ・アールマティ』
 
 
これはこの世界の名であり、"敬虔"つまり『主』への深い敬いの心を意味する言葉である。
 
 
八方位と中央のそれぞれに位置する九つの主国では、長きに渡り『主』による各々の統治が行われてきたが、既に崩壊しつつあった。
 
 
 
争いと荒廃を繰り返してきた、この世界『スプンタ・アールマティ』には、幾千の時を越え、今も尚、人々の間で囁かれる伝承がある。
 
 
 
――古来よりこの世界の何処かに存在する、紅と蒼、二振りの剣。その一振りを手にした者は、巨大な力を意のままに出来るという。
 
 
 
『管理者』に選ばれた『剣者』のみが手にすることを許される力。それを求め、剣を欲する者は星の数ほど居るが、願い叶わず、彼の者達の流した血は計り知れず。偶然と必然、そして気まぐれによって選ばれた『剣者』は数えるほど。
 
 
 
世界を廻すのは、二振りの剣。
そう、何時だって変わらない。善くも悪くも、世界は動く。
 
 
世界を創るのは、預言者。
そう、何時だって変わらない。善くも悪くも、世界は決定づけられる。
 
 
世界を導くのは、調整者。
そう、何時だって変わらない。善くも悪くも、定められた世界を正す。
 
 
何時だって変わらない。
その定義を覆すため、青年は立ち上がる。彼の者の名は――。
< 2 / 8 >

この作品をシェア

pagetop