小鳥と恋愛小説家




外は相変わらずどんよりと曇り空だったけど、雨はまだ降っていなかった。



けれど、じめじめと湿っぽい空気がまとわりつく。



「…………。」



「…………。」



綾瀬くんと並んでベンチに座った。沈黙が続いてもあたしには話しかける勇気がなくて………



ただひたすら、綾瀬くんが口を開いてくれるのを待った………。







そして、








「ツバサと約束したからぜんぶは言わないけど………

見ての通りツバサは重い心臓病なんだ。


そんなツバサにとって…………カナはたったひとつの希望なんだよ。


この意味わかる……?


言えないから察してほしいな…………。




――――ツバサの命を繋げるためにね。」



「………………!!!!」










まっすぐにあたしを見つめる綾瀬くんが怖かった……………。










『―――別れてよ!!


カナヤがいなきゃ生きられないのに……………!!!』










ツバサさんのあの悲痛な声が頭を過る。













胸が―――――









痛くて



痛くて












――――ひどいよ。










察したくなんて、ないよ……………。











でも――――







知らずにいたいと思ったあたしは














なんてひどいやつなんだろうと、思った。











< 258 / 344 >

この作品をシェア

pagetop