氷の姫君
寂しい
「ここにダルジェ様はいらっしゃいますよ。」

そういうとファードはいなくなってしまった。

部屋を覗くと広い広い部屋の真ん中でレンさんとダルジェは向かい合わせに座っていた。
表情からしてなにやら難しい話をしていた。

これ、入ってもいいのか?
おずおずと覗いているとドアに頭をぶつけてしまった。

「誰だ?」

レンさんが叫ぶと同時になにか硬いものが頬を掠める。
その衝撃で座り込む。
後ろを見るとなにもない。
激しく痛む頬を触ると結構な量の血が出ていた。

え、なに今の?
呆然と座り込んでいるとダルジェがこちらに寄ってきた。

扉の隙間からみえるダルジェの表情も険しい顔をしていた。
ど、どうすればいいの?
半泣きでその場から去ろうとすると扉が開いた。

「月華?」

驚いた様子のダルジェがこちらを見ていた。

「ご、ごめんなさい!」

慌てて走りだろうとするとダルジェに腕をつかまれる。

「なぜ逃げる?」

「だ、だってあたし邪魔でしょ?」

びくびくしながら答える月華。
瞳には涙がたまっており、頬を見ると血が出ていた。
レンのやつ殺気をだして叫んだな。

ダルジェは舌打ちしたくなる気持をこらえて月華に話しかける。

「邪魔じゃない。脅かして悪かった。まず中に入ろう。」

若干戸惑いながらも腕を引くと素直についてきた。
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