眠れぬ夜は君のせい

├彼とアタシ

真っ暗な部屋に灯った、小さな赤い火。

タバコは嫌いだ。

何故なら、彼が出て行く証拠だから。

「じゃあな、アリ」

額に触れるぬくもり。

一瞬だけ触れたそれは、すぐに離れる。

電気すらついていない真っ暗な部屋を、彼はなれた様子でドアの方に向かう。

バタン…。

やけに大きく響いたドア。

そっと、それまで彼がいたぬくもりに手を伸ばした。

――帰らないで

何度言いかけたことだろう。

でも言えなかった。

自分の立場は、自分が1番わかっているから――。
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