眠れぬ夜は君のせい
「はい、何でしょう?」

谷田部が聞いてきた。

「俺が家柄とか財産なんかを捨てるって言い出したら、お前はどう思うんだ?」

俺はジョーダン半分、本気半分でそんなことを言ってみた。

そのとたん、谷田部が考えるように黙った。

いや、俺がそんなことを言い出したから驚いているんだろうな。

そう思いながら彼からの答えを待っていたら、
「いけません」

何とも予想通りの回答をしたから、俺は笑えなかった。

そう言うと思ってたと、口には出さず、心の中で呟いた。

「正宗様は由緒正しき黒川家のご子息です。

そんなあなたが伯爵家を捨てると言ったら、話になりません」
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