渇いた詩
「俺はバンドを初めたとき、俺の両親は猛反対だった。当たり前だ。今まで海藤グループの後継者として様々な教育を受けてきたのにいきなりバンドだなんて」



「だから俺は久弥の両親にメチャメチャ嫌われてるけどな」



蒼さんは苦笑しながらタバコに火をつけた。



「俺は蒼に感謝してるけどな……許しまではいかないけどバンドが認められるようになって両親は俺にある条件をつきつけた」



条件?



「『バンドの実力は認める。だが、今後後継者になるのであれば一切の干渉はしない。もし、バンド一本で生活するのであれば海藤グループにふさわしい女性とお見合いし結婚すること―――。』これが、条件だ」



つまり、久弥がどっちを選んでも海藤グループは守られる。

久弥が海藤グループの後継者の選択をしたら、あたしはこれからも久弥のそばにいられる。



久弥がバンドを望めば、あたしと久弥の未来は



ない。




「ふぅ……相変わらずお前の親父は頭が固いな。後はお前たちが勝手に決めろ。俺は先に車に戻ってる」



蒼さんはタバコを吸いながら部屋から出ていった。
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