渇いた詩
結局、久弥はお父さんの晩酌に付き合ってくれた。



ご飯もおかわりしてくれたり、お母さんのつまらないギャグに笑ってくれたり、


あたしも久弥とお父さんにお酌したり、


そうして楽しい夜は更けていった。



「ふぅ……あぁ!!緊張した!!」


お風呂から出た久弥は兄貴のパジャマを借りてあたしのベッドに倒れこんだ。



「大丈夫?そんな緊張してるようには見えなかったけど……」


「バカヤロウ。彼女の父親と飲むなんて初めてだから俺の緊張、半端ないぞ?」


「えっ?初めて?」

悔しいけど久弥の前の女性関係が豊富なのはこの短い期間でも十分わかる。


気遣いだとか、優しさだとか、慣れてるんだろうなって思うことがたくさんあった。



「ちなみに言っておくけど、彼女の家に来たのも初めてで、自分の家に彼女を連れていったのも桜が初めてだよ」



そう言うと久弥はあたしに優しくキスをした。



「全部、全部。桜が初めて」



「あたしも……こんなに人を好きになったの、久弥が初めて」



二人で顔を見合わせて笑いあった。
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