金星

「優奈……」


朋宏が駐車場の入り口に来た。

細身のチノパンにポロシャツ、といつもの綺麗目の格好。


「ともひ……ろ」


こっちに向かってくる。


「優奈ごめん! 会いたかった」

「……っ」


あたしの後ろに加奈と潤一がいるのにもかかわらず、

急に朋宏は強く、あたしを抱きしめてきた。


その腕の力は強いけど、大切なものを抱きしめているような優しさを感じた。


「お願い、もうしないから、帰ってきて」


真剣な口調。

思わず、目の奥が熱くなる。
< 242 / 358 >

この作品をシェア

pagetop