金星

「ばーか、冗談だよ」


「ふぇ?」


まだ意味が分かっていないようで、頭の上にはてなマークが乗っているような優奈。


「いや、本気かもしれないけど……」


聞こえないようにそう呟いたつもりだったが、


「な、何言ってるの!? このエロ男ー!」


と、ようやく優奈に意味が通じたようで、すねに蹴りを一発入れられた。


「いてーよ、ばーか。じゃまたな」


最後にもう一回、長めのキスをした後、優奈と別れた。


「明日遊びに行っていいーー?」


「ああ」


「あと、大好きだよーーー!」


「はいはい、分かってるよ」


しーんとした住宅街の中、近所迷惑だろ、と思いながらも、

右手を上げて、優奈にありがとう、と心の中で呟いた。
< 353 / 358 >

この作品をシェア

pagetop