エール

貴方は居ない




知らせを聞いて、急いで病院に向かう。



もつれる足を一生懸命動かして、前へ出した。





霊安室へ行くと、
崩れながら泣くおばさんと、それを支えるおじさん。

彼の父と母だ。



霊安室のひんやりした空気が身体に纏わり付く。



ベッドで眠るように横たわってるのは、

私の彼氏の本庄 豊(ほんじょう ゆたか)だった。






「豊?」



震える声で呼ぶ。



いつもなら、
「なあに?音和」

と、少し甘い声で聞いてくれる豊。

優しい顔で、首を傾げながら聞いてくる豊が目に浮かぶのに、

今目の前の豊は眠ったまま。





嘘でしょ?



 

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