双子月
美穂は瑠璃子を実家へ送り届けたその足で、池田さんに雫のアパートまで送ってもらった。


今日は学園祭で遅くなるから友達の家に泊めてもらうと口裏を合わせてある。

池田さんは、美穂が雫と仲が良いのを知っているので、時々こうして逢う手引きをしてくれる。


チャイムを押すと雫が出てきた。


「学園祭、来なかったのね。」

とコーヒーを飲みながら美穂が言った。


「人混みなんて疲れるからイヤよ。
智也に今度の診察の時に、どんな風だったか聞くし。」

雫は冷めた感じで答える。


「私が教えてあげようか?」

美穂がイタズラっぽく笑う。


「朋香は光弘に無視されてボロボロ。
瑠璃子は何かあったわね。
多分、真朝はそれが何なのか知っている。
明日皆でランチなの。
その時に全部聞き出すわ。」


頼んでもいないのに美穂がペラペラと喋り出す。

「美穂って、私といる時はお喋りよね…」

「ん、だって…ね?」

美穂はまだ何か喋り出しそうだ。



雫は自分のコーヒーカップをテーブルの上に置いて、

「うるさい口は塞ぐよ?」

と言って、美穂にkissをした。

美穂もそれに応えながら、カップを同様にテーブルの上に置いた。


「久々…」

と美穂はクスクス笑う。


「イイの?
あんたの大事な朋香は、今頃泣いているかもよ?」

雫は美穂に触れながら言った。


「朋香は大事よ。
だけど私は、雫の方がもーっと大切なの。
知ってるでしょ?」

ペロっと舌を出しながら美穂が笑う。


「朋香が知ったら泣くよ…」

雫は珍しく呆れ顔で言った。

そして美穂に触るのを止めて、ベッドに横になった。


「えー、雫、どうしたの?」

美穂がちょっと不満気に言う。


「疲れた。
寝るから。」

言うより早く、雫はベッドの中に潜り込んだ。


「もぉ~…
でもそんなとこも好きなんだけどね…」

と美穂は雫の頬に軽くkissをして、自分も雫の隣に入り込んだ。


雫の体温が、今日は何故かやけに暖かい。




< 120 / 287 >

この作品をシェア

pagetop