双子月
…なるほど。

考えてもみなかった。


確かに世の中、心療内科に通っている人は案外少なくはないが、なかなか身の周りにはいないものである。


事情を知っている光弘や美穂に話を聞いてもらっているとはいえ、やはりこの気分の虚しさや身体の辛さは上手く伝わらない。


ただでさえ、別々の人間同士。

相手の話を聞いて理解しようと努力は出来るが、完全に一致などしない。


ましてや、精神的な病気というハンデを背負っている者にとって、他人に理解してもらうという行為は尚の事、難しい。


自分でさえ自分のコトがよく分からないのに。

何を理解して欲しいかすら、分からないコトだってある。


「分かりました、やってみたいです。
どうすればイイんですか?」


「僕が橋渡しをするよ。
実はもう彼女から預かっているんだ。」


そう言って林先生が差し出した黒い封筒を朋香は受け取り、裏を見た。



『雫』


…ワープロで、そう打たれていた。


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