双子月
朋香の中で整理が付くと、早く伝えたくて仕方なかった。



『愛してる』



これ以上に、この気持ちを伝えられる言葉があるんだろうか。



『愛してる』
『愛してる』



本当は理屈なんか通り越したってイイ。

言葉になんかしなくたってイイ。


ただ抱きしめて、次は朋香が光弘の心臓を頂く番だ。



早く触れたい。

あの人の全てに触れたい。

今は凍えてしまっている、鮮やかな冬の太陽のような貴方の温もりをもう1度確かめたい。



愛しさが溶けて、身体中の神経と血管を支配して、指先までも髪の毛の1本までも、あの人が愛しいと叫んでいる。


もう朋香1人では抑えきれない。


口を開けば『愛してる』としか出てこないだろう。

手を伸ばせば『愛してる』としか表現出来ないだろう。



『愛してる』
『愛してる』
『愛してる』




朋香は携帯に手を伸ばし、すぐに光弘に電話をかけた。


『…もしもし…?』


声のトーンだけで、あぁ、今寝ていたんだな…という事がすぐに分かる。


『光弘、逢いたい…
逢って話がしたい…
私の全部を聞いて欲しい
私の全部を抱きしめて欲しい』


寝起きの光弘に気を遣っていられる程の余裕は朋香になかった。


光弘は、

『…分かった…
俺が全部ぶつけたように、朋香の気持ちも全部聞かせて?
バイトが夕方5時に終わるから、ファミレスんとこに来といてくれる?』


と言った。


(もう大丈夫)


2人は心の中でそう想った。



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