双子月

5…アナタを想う刻

火曜の夜は次の日が朝から診察なので、いつもは早目に寝る事にしている。

しかし、今夜は便箋と格闘中。


「う~ん…何を書けばイイのかなぁ…」


朋香はクッションに身を預けて唸っていた。

明日の診察の時、雫への手紙を林先生に渡さなければならない。


レポートなどは提出期限ギリギリまで放っておくタイプではない。

いつも余裕を持って作成し、提出している。


それが今回の手紙では、前日の夜になって焦っているのだ。


もちろん前々から書こうと、便箋に『雫へ』とは既に書いてある。

ただ、毎日どれだけ悩んでも、その続きが出てこなくて行き詰っていた。


雫から貰った黒い封筒を手に取り、改めて中身を読み返す。


「黒い便箋に白い字。
しかもワープロで打ってある。
ほんと、不思議な子…」


朋香が用意した便箋は、淡いピンク色。

もちろん手書きである。


レポートはパソコンで作成するけれど、手紙は自らの手で書くようにしている。

というよりも、大半の人がそうだろう。

手紙をワープロで打つ方が珍しい。


(珍しいケースだって言ってるしなぁ…
手で書けない子なのかも…)


そう考え出すと、ますます何を書いて良いのか分からなくなる。

ほんの些細な事で傷付けてしまうかもしれないのが怖い。




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