双子月
その時、足音がこの部屋に近付いてきている事に気付いて、美穂はパッと雫から離れた。



「朋香…あ、えっと…
し、『雫』…?」

恐々とドアの前に立ってノックしているのは、大輔のようだ。


「じゃあ、私、瑠璃子の方に行ってくるわね。」

と言って美穂は立ち上がり、ドアを開けた。


「あ、み、美穂…」


「ちょうど良かった、私、今から瑠璃子の方に行くの。
雫が退屈しないように、話相手になってあげてね。」

と大輔と入れ違い様に、美穂は笑って言った。



(えぇ~、俺1人で?
それはちょっときついモノが…
だって『雫』なんだろぉ?)


大輔は心の中で焦っていた。

雫の方を見ると、少しはだけている入院着の胸元を戻している。


(…!
そういえば、昨日の話じゃ、美穂と『雫』は…!)


さっきまで、この密室で何をやっていたのだろうか。

大輔は想像しきれなくて赤面してしまった。



「大輔、せっかくだからこっち来て、座ってよ。」


雫が柔らかく微笑んで言うので大輔も少しだけ緊張を残して、


「あ、あぁ、調子はどう?
クッキー持ってきたんだけど…」

と、ベッド脇の椅子に座って、雫にクッキー入りの箱を差し出した。


「わぁ、ちょうど甘いモノが食べたかったの。
ありがとう!」


雫は手を合わせて喜んだ。

そういうところは『朋香』と変わらない。



(本当に、別人格なのか…?)

と、改めて疑ってしまう。




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