双子月

6…月が見ている罪

ハンドルを握る左手の薬指の指輪がキラリと光る。

言わずと知れた結婚指輪だ。


それを見る度、その光が刃となって突き刺さったかのように、瑠璃子の胸は痛む。

けれども、本当の事を知ったら、この人、雄一さんの奥さんが1番胸を痛ませるのだろう。


「瑠璃ちゃん、どうしたの?」


雄一が顔を覗き込む。


「ん…雄一さんの…
奥さんと子供さんの事を考えちゃって…」


瑠璃子は申し訳なさそうな表情で答える。


「何でもないですよ」と答えればいいのに、天然で素直な瑠璃子は正直に口に出してしまうのだ。


「瑠璃ちゃん、それは言わない約束だよ。
僕の奥さんと子供は、瑠璃ちゃんの事を知らないから幸せに暮らしている。
だけど、僕の家族の事を知っている瑠璃ちゃんには辛い想いをさせている事は分かっているんだ。
本当は、1番辛い想いをしなければならないのは僕なのに。
けれど、本当はあまり罪悪感を感じていない。
何故だか分かる?」


「罪悪感、感じていないんですか?
何で…?」


不倫という、倫理的・世間的に許されない行為に罪悪感を感じないと言われては、疑問に思わずにいられない。


「それはね、本当にどっちも大切だからなんだ。
1人しか好きになってはいけないなんて、誰が決めたんだろう。
好きになる・大切に想うって事はたくさん出来るはずなのに、最終的には1人に決めなきゃいけない。
僕にとって、今の奥さんと出逢うのが早かったというだけで、瑠璃ちゃんとの事も真剣なんだ。」





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