双子月
そう言って招き入れてくれた美穂の部屋は、白を基調としたシンプルで、それでいてどこか女の子らしい雰囲気を出していた。

さすが美穂…とでも言うべきか。


「わ~、本当にお嬢様っぽい部屋!」

「見て見て、ベッドなんか、天蓋付きだよ~」


皆、物珍しそうに部屋の中を物色している。

見ている皆も落ち着かなければ、見られてい美穂も何となく落ち着かない。


「見て、棚の上に写真立てがいっぱい!」


瑠璃子が覗き込むようにして見ている。


親戚一同で撮った写真、幼い美穂のバイオリン発表会の写真、知人の結婚式の写真など…テディベアと一緒に綺麗に並べられている。


「美穂、バイオリンなんかやってたの~?」


「うん、小さい頃だけどね。」


「うわ、乗馬もしてるよ~」


「うちら小市民とは違って優雅ですなぁ。
馬なんて、馬刺しでしか私の役に立たないよ。」


相変わらず真朝の言う事はどこかえげつない。


「失礼します、お持ち致しましたよ。
先日、奥様が作られたケーキもあります。」


池田さんがお茶と一緒に持って来てくれた。


「さ、休憩して、また一頑張りしましょ。」


「わぁ、美味しそ~!」


美穂は3人の注意を写真達から引き離した。

1つだけ奥の方で伏せられた写真立てについて、何か聞かれる前に…。



< 40 / 287 >

この作品をシェア

pagetop