苦しみの(涙)
声がしたのは、屋根の上。
そこにいたのは、私と同じ雨に濡れてる兄者とそっくりな……
「誰だ?」
低く冷ややかな声で問いかけるのは、あの時と同じ兄者。
私を守るように私の前に立った。
「お前に用はない。早く妹を龍樹(りゅき)を返せ。」
「龍樹だと?」
りゅき………――
その言葉が頭の中でこだます。
よく分からない痛みに顔を歪めた。
それに気付いたあの人はなぜか、満足そうな顔をしている。
「本当に忘れてしまったのか?龍樹…。俺と過ごした日々を?」
痛みはどんどん酷くなる。