宝物 〜幸せな日々〜

別れ、と始まり

「まだ、31ですってー」
「娘さん2才ですってよー」
「かわいそうにねー」


あれで、ヒソヒソ話てるつもりか?
なんか、あいつら、…。ムカつく。


「果林ちゃーん。そっちいっちゃダメよー!」
「やー!かりんもママとねんねするー!」

果林が出棺前の美樹目がけて、思いっきり走って来る。

小さい娘には、「死ぬ」ことが理解できないらしい。

「パパー!」
「すみません、要さん。果林ちゃん、どうしてもパパとママのいるお部屋行くってきかなくて…。」
「あ、いえ…。こちらこそ果林のこと、任せっきりで…。」

「パパー、今日お客さんいっぱいおうちに来るねー。でも、ママずっとねんねしてるよー?だからね、かりんもね、ママとお昼寝するのー。」


…。
2才の娘に、かける言葉がみつからない。

警察から帰って来て以来、する事が多くてバタバタしていた。
美樹のおばさんにあたる人が、みかねて果林を預かってくれていた。


「…それでは、美樹さんに最後のお別れを…」


時間…だ。


「パパー、あのおじちゃん変。ママとみんながお別れだってー。」

果林…。

「果林、ママとはもうねんね出来ないんだよ。お別れもね、みんなだけじゃなくて、果林やパパも、ママとお別れするんだ。」

「…なんで?…かりんはいやだもん!」

どうにも、納得しない顔だ。
嫌がる果林を車にのせた。
俺にはまだ、美樹の遺影を運んだりと、しなきゃいけないことがあって、…。


果林と話てる暇など…、なかった。

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