夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
健吾が重いため息を落とした。


補欠はやっぱり何も言わず、静かに、健吾を真っ直ぐ見つめていた。


「好きだって言って泣いたと思ったら」


今度は手のひらを返したように、健吾が言葉を詰まらせる。


健吾が言葉を詰まらせるのは、珍しい。


いつもヘラヘラ笑ってばかりいるやつが、こう切なげに表情を歪めると調子が狂う。


初めて見た。


健吾も、こういう顔するんだな。


「今の告白は無かったことにしてくれ、って。やっぱり好きじゃないって、笑うんだからよー」


「…え」


「女ってのはむつかしーなあ」


ヒヒッと笑って、健吾は幅広い肩を小さくすくめた。


「おれ……振られたらしい」


あたしと補欠は目を合わせて固まった。


一体、何がどうなってんだ。


あたしの予感が的中していれば、ふたりは両想いのはずなのに。


「どういうことだ」


あたしが詰め寄ると、健吾は教材室の方を見つめたあと、ポケットに両手を突っ込んで、


「おれだって分かんねえよ」


ハハと苦笑いして、階段を下りて行く。


広い背中が、やけに小さくすすけて見える。


いつもは堂々としてしゃんと伸びているくせに。


< 218 / 653 >

この作品をシェア

pagetop