夏の空を仰ぐ花
灰色の雲と雲の隙間から、薄明光線が数本の筋になって地を照らしていた。


あたしは補欠にしがみついた。


「……どうした?」


補欠が不思議そうな声を出して、あたしを強く抱きしめる。


あたしは何も答えずに、ひたすら補欠に抱きついた。


あの光の筋に吸い込まれてしまう日が来るんじゃないかと、不安になった。


こんなに幸せなのに、不安で不安で、だから、補欠に抱きついた。


補欠の肩越しに、その光景を見つめながら、怖くなった。


本当にきれいな光なのに。


あたし、知ってる。


あれ、あの光。


天使の梯子(はしご)。







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