夏の空を仰ぐ花
どこまでも青い春空の下を、駆け抜けた。


もうすぐ、南高へ続く桜並木も色づきそうだ。


急こう配を一気に下ると、下のバス停にちょうどバスが入って来たところだった。


【南台公園前行】


プシュウ、とエアーが抜ける。


バスのドアが開いた。


あたしはそのバスに、スピードを緩める事なく飛び込んだ。


昼時の車内はガランとしていた。


乗客はひとりも居ない。


あたしは整理券を掴んで、呼吸を整えながら一番後ろの窓際に座った。


声を殺して、無意識のうちに整理券を握りしめていた。


クシャッと音を立てて、ぐにゃりと歪む整理券。


くたびれたエンジンの音が、あたしの泣き声をさりげなく消した。


ガタン。


自動ドアが閉まる。


「間もなく、発車致します」


乗客はあたしだけなのに、アナウンスが丁寧に流れる。


プアン、と間抜けなクラクションが鳴いて、バスはゆっくり加速した。


今日は、うららかな小春日和で。


貸切状態のバスは、春の陽射しを受けて、青空の下を走る。


後悔と、底知れぬ不安に打ちのめされて泣き崩れるあたしを乗せて。


南高校が遠ざかる。


それに比例して、涙があふれた。


ごめんね、補欠。


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