夏の空を仰ぐ花

一番か特別か

例えば、大切なひと。


そのひとの一番になりたいか、それとも、特別になりたいか。


どちらかと問われたら、今までのあたしは迷うことなく、後者だった。


でも、今一度問われたら、前者になるだろう。


あたしが前者になるきっかけをくれたのは、優しい春の三日月と、補欠がくれたまぶしい言葉だった。












「吉田翠さん」


CTとMRI検査を終えて待合室で待っていると、診察室へ呼ばれた。


カーテンを開けて入って行くと、長谷部先生が食い入るように写真を見つめていた。


「うーん。今のところ、大きな変化はないなあ」


診察室の壁時計は、もう二時半をとうに回っていた。


「そっか」


ぽつりとこぼしたあたしを見つめて、長谷部先生がやわらかく微笑んだ。


「もう少し、様子を見る事にしようか」


「へい」


「あまりストレスをためるような生活はしないでね」


「……うん」


「と、言っても、無理な話だよね」


小さく笑った長谷部先生が、うつむくあたしの頭をぽんと弾いた。


大きな優しい手のひらだった。


「へ?」


顔を上げると、長谷部先生が気遣うように言った。
< 377 / 653 >

この作品をシェア

pagetop