原石のシンデレラ
突然、舞踏会の会場の明かりが消えて真っ暗になったかと思うと、パッと…ステージの照明だけがついた。


『ーー皆様、御出席頂き…誠にありがとうございます。……』


挨拶を始めたのは、此処のお偉いさんだろうか。


…淡々と長い話が続いて、何だか肩が懲りそう。


周りの人達が、真剣に話を聞いている中で、私は炉惟に、小声で質問した。


「…炉惟さん、あの方は……」

「あの方は、僕のお父様ですよ」


ワイングラスに入ったジュースを、コクリと飲みながら、私の質問に答えてくれた。


私は慌ててステージに視線を向け直し、じっくりと男性を見つめた。

遠くだから、よく分からないけど…確かに、炉惟さんと似てるような気がする。


「ーーそんな堅苦しくしなくても、大丈夫ですよ。どうせ今回も同じ……」


【……突然ですが今日は、皆様に紹介したい方がいます…】

炉惟が言い終える前に、ステージに居る、父親が少々興奮気味に声のトーンを上げた。


「…まさか…」


【……その方は私の息子を助けてくれた方なのです!……私も、父親として、御礼を言いたいです…ありがとう!】


(…やっぱり…)


【…木下雪詩(キノシタ,ユキシ)さん!】


パッと、私に照明が向けられた。
眩しさの余りに目が眩んで、手で抑えていると、会場が、どっと一気に盛り上がった。


《ワァァァァ……パチパチ》


周りの人達から、盛大な拍手を貰い、私はペコリ、ペコリとあちこちに会釈をした。



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