原石のシンデレラ
「ーーじゃあ、雪詩ちゃんを家まで送ってくるよ」


「…おぅ。」


《カラン…カラン。》


喫茶店から出ると、もう陽は傾き始めていて、少し薄暗い印象を残していた。


「……僕の家は、向こうのアパートなんだ」

「………。」


……、まだ広戸さんの返事に答えてないし、それに私達まだ付き合ってないのに。



ーー頭の中で、グルグル急速に色々なことを考えちゃって口では言えないから、ずっとモヤモヤしてる。


何か、こういうの嫌だな。。


雪詩は、今度こそはと思い、足を止めようとした時に、ふと顔を上げると、広戸さんが顔を近付けてきた。


ーーいやッッ!!キスされる…。


私は、ギュッと目をつぶり、広戸さんを突き飛ばそうとする前に、《ーバキィィ…》と鈍い音がして《ードサッッ…》と、倒れ込む音が聞こえて、雪詩は恐る恐る薄目を開ける……。


黒いスーツを着た後ろ姿が、ボンヤリとシルエットに浮かび上がる。


(ーーえ、まさか。)


パッと目を開けると、そこに居たのは……炉惟だった。


「……ろ、炉惟さんッッ!?」


雪詩が有り得ないと言わんばかりに大きな声で叫ぶと、炉惟は優雅に振り向き、自分の口元に指を押し当てて、まるで"ーー静かに"…と言うような素振りをした。




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