原石のシンデレラ

心の雨

「ーー只今、戻りました。…雪詩さん!?どうされましたか?」


泣き続ける雪詩を見つけて、慌てて炉惟が、駆け寄ってきた。


「………」
言葉が詰まり、返事が出来ない雪詩を見て、炉惟は、エリーゼに視線を向けた。


「ーーエリーゼ。もしかして君が、雪詩さんに何か……?」

その問いかけに、面白くないとでも言いたげな表情で、彼女は溜め息を吐き答えた。

「……何でもないわ」


「いいから、答えろ!!」


突然に怒鳴る炉惟にエリーゼは、ビクッと肩を震わせた。


「……私は、ただ…彼女に『両親を亡くしたことを利用して、同情してもらおう』としてるんじゃないかって問い詰めただけ………」

ーーパァァン!!…と、乾いた音が部屋中に響き渡った。


エリーゼは、信じられないというような表情で、叩かれた左の頬を押さえて炉惟を見つめている。


「ーーなんてことを言ったんですか!?君は…ッッ!!雪詩さんに、よくそんな言葉が言えたものですね……。君には失望しましたよ」


「ーーーッッ!!…また、ぶったわねッッ」


エリーゼは、談話室から出て行き、走り去る足音が遠くまで聞こえていた。



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