辻斬り
「いやああああ! 手が、手が!」

ぎゃんぎゃん泣きわめくまなみの声のほうに目をやると、まなみのいる場所辺りの霧は、ほのかに赤く染まっていた。
ぷしゅうううううという音、悲鳴、その奥にある真っ赤な殺意と悪意を、皆連想せずにはいられない。

——霧が、人を襲うというのか?

なすすべなく恐怖におののき、散りじりになりながら皆逃げていった。

我慢の限界だった。

——逃げ出さなければ、本当に。
この村に待ち受けているものは、もはや死のみかもしれない。
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