人魚姫の嘘


短剣を海に捨てようと
右腕を振り上げた


でも


捨てられない…



理由は分かってる
私には希望が無いから。



王子の気持ちを私に向ける事が
不可能なんだと…
心の奥底で思っているから


振り上げた右腕を
砂浜に振り落とした


声は出ないけど
大きな声で泣いた



泣いたんだ。
おかしいけど
大声で。



離すことのできない
短剣



全てを見越して
魔女は私に短剣を渡したんだ



まるで私の心を
全て解っているかの様に



このもどかしさ
例えようのないこの気持ちを



全ての始まりは
私の恋への我が儘から
始まったことなのに

そんな当たり前なことを
思い出せないほど
私の頭の中はぐちゃぐちゃだった




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