勇者様と従者さま。

一宿一飯の恩義というやつです!

 バタバタと足音がして、

「きゃあ!」

「ごめんよ!」

 走ってきた人影がエヴァと衝突して、一緒にすっころんだ。

 声からすると女性だ。

「エヴァ様!?気をつけろと言ったのに!」

 アーサーは近寄って二人を助け起こす。

 すると。

 がばっ、と女性が起き上がった。

 まだ若そうだ。しかし、体や頭をすっぽりおおう服を着ているので顔立ちや体型はよくわからない。


 彼女は突然まくし立てた。

「ねえ、あんた達!かくまって!」

「…え?」

「追っ手が来てんの!ねえお願い!!仲間っぽく振る舞って!」

 余裕のない口調からとにかく切羽詰まっているとわかった。

「な、何がなんだかわかりませんけど…任せて下さい」

 エヴァが頷く。

 かすかに足音が聞こえてきた。


 エヴァは表情を引き締めると、

 思い切り女性に抱き着いた。

「会いたかった!もう離さない…!」


 すぐに、数人の男性がやってくる。

「おい!そこの!」

 呼び止められてアーサーは顔をあげた。

「ここを若い女が通らなかったか?」

「いいえ」

しれっと答える。

 相手もそうは期待していなかったようで、通りすぎようとしたが、ふと熱烈な抱擁を交わすエヴァと女性に目をとめた。


「…おい、あれは」

 アーサーは困る。

 あれは、と聞かれても…

「あー、その、取り込み中のようで…」

 アーサー達のやり取りを聞いたか、エヴァが抱擁を強めた。

「すきよ、愛してる!」

 男性は、とても微妙な顔で頷いた。

「そうか…迷惑をかけた」

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