勇者様と従者さま。
「ナナイ様、ナナイ様、従者さまを探してくださいー!」

「…あのねえエヴァ。何度も言っているように、あたしはあ――…って、今、何を探せって?」

 毎度お馴染みになってきたやりとりだが、<アーサー>を探せと言われては、さすがのナナイも目を瞠った。

「あの、従者さまを」

「…どういうこと?逃げられたのかしらあ?でも…そんな人間じゃなかったはずよお?」

 ナナイは秀麗な眉を寄せた。

 そこへシュリが口を出す。

「従者は一瞬にして消えたのだ。それは考えられぬ」

「…消えた、ですってえ?ちょっと待って、貴方達今どこにいるのよお」

 その問いに、エヴァが場所を簡潔に説明すると。

 ナナイは何とも言えない表情になった。

「…そこ、知ってるわあ。なんだか妙な気配があるみたいなのよねえ。魔物とも違う…」

「この辺りでは有名な幽霊屋敷なんですって!」

「幽霊…ねえ。うーん、出てもおかしくないわよお、そこ」

「ええっ、本当に!?」

「…あるじ、喜ぶでない」

 シュリが嘆息。

「従者が連れ去られたやも知れぬのだぞ」

「そ、そうですね…!従者さま、きっと怖がってますよね」

 そのやりとりに、ナナイがころころと笑った。

「確かに、そういうモノ苦手そうよねえ…あら、噂をすれば戻ってきたみたいよお?」

 ナナイの言葉通り、廊下の奥からやや早足の足音が聞こえてきた。

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