enjoy!

周りはどこも満席で、確かに空いているの
はあたしの隣くらいしかなかった。

 「はーい、席ついて!」

あ、藤本先生。
…ちょっと顔色悪いけど。

 「今日は、この間の選手権大会のDVD見
  て勉強な。
  動きとか確認して。」

ああ、やっぱりそうなんだ。

 「見るのも勉強だぞ。
  ちゃんと見るように。」

…気まずいな。
だって、隣が笹嶋さんって…。
あたしピンチだよ。

 「返事…聞きたいんだけど。」

笹嶋さんが耳元でボソッとそう言った。
あたしは顔が赤くなるのを感じた。

 「えっと…あの…。」

こんなところで?
誰かに聞かれても不思議じゃないし…。

 「ちょっと…待っててください。
  帰るときには答えだしますから。」

こんなにいい人なのに…。
…こっちだってツライよ。

 「愛華ちゃん、何かあったんですか?」

 「なんでもないよぉ?」

声が裏返った。
…カッコ悪。

 「じゃ、オレはこれで…。」

先生はDVDをセットして帰っていった。

 「愛華、これって福岡でやったやつだっ
  け?」
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