プラネタリウム
「なにぃ?青蘭の学園祭だと!?」


隣で秀二が興奮気味に叫んでいる。


「……声でけぇ」


片耳を塞ぎながら渉が顔をしかめる。





あの後、帰路につくまで真央と色々話した(相手の一方的な話だったが)


その話によると、学園祭では喫茶店をやるらしい。メイド服を着るのが楽しみだと言っていた。変な趣味だ。


「さつきも一緒に回るの」


とも言っていた。


さつきとは真央の幼なじみで、唯一の親友だそうだ。


その娘も学園祭で一緒に行動する予定だという。




つまり、これは明らかにデートではなくなったわけだ。



そのことを秀二に話すと、血相を変えて渉に飛び掛かってきた。



「いいじゃねーか!女の子ふたりに囲まれて…。しかも青蘭だぞ!?高嶺の花じゃんか、羨ましいぞ!文句言ってんじゃねーよ!!」



思いきり肩を揺さぶられる。


「わーった、だからやめろ!頼むから…」


まだ恨めしそうに渉を見ていた秀二だったが、渉がポケットから2枚のチケットを出すと、たちまち目の色が変わった。


「え?何で2枚??」


とぼけて、期待の目で渉を見る。


「お前の分まで取ってきてやったんだよ」


秀二が文字通り、飛び上がった。



「うおーっ!サンキュー!!お前が親友でほんとよかった…」



秀二はもう涙ぐんでいる。

大袈裟だが、なんとなくやってよかった気がする。




「お前が誘う女の子ならきっと可愛いんだろうな〜」


秀二が夢見心地で呟いた。


「駄目だ。真央はやめとけ」


すかさず渉がきっぱり言い切った。


「へ?なんで?」


「なんでもいいから、お前はさつきって子にしとけ」


何でこんなにむきぬるのかは分からない。


何でデートしたいって言ったのかも分からない。







ただ、自分の気持ちに気付くのが怖かっただけなんだ―――。
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