変人執事とツンツンお嬢様
episode1

ツンツンで何が悪い



「お父様、引っ越しの支度が出来ました。」




中学を卒業してすぐの春休み。


私はこの家を出る。

とは言っても、ただ引っ越しするだけだ。




「そうか。元気でな。」


「はい、お父様。今までありがとうございました。」




こんな挨拶をしても、お父様の心に私はいない。

お母様が病気でなくなってから、私はずっとひとりぼっちだった。




「では、明日の朝には出ます。
お父様もお体に気を付けて…」


「あぁ。」




最後に深く頭を下げ、お父様の部屋を後にした。


もう……本当にひとりになれるんだ。


そう思うと、心が軽かった。




.



< 3 / 173 >

この作品をシェア

pagetop