AZZURRO
晴れ渡った空の下
雪乃は大きく毬を蹴りあげる


普通の貴族の姫たちなら
決してすることのない行動だが


雪乃が普通の姫とは違う事を
既に重々理解していた
クリスの宮の侍女や兵士たちは
特に気に留めることはない


「マリモっ!行け!」

雪乃の掛け声に
傍に控えていた若い獅子は
空高く飛び
蹴りあげた毬を見事にキャッチすると


俊敏な動きで雪乃の元にもどり
「褒めてほしい」
といわんばかりに
毬を雪乃に渡し胸を張った



「すごい!
上手くなったね。
これならもっと難しいのも出来るかも。」


マリモは強じんな足腰と
美しい肉体を備え
既に成獣と変わらない姿になっていた


獅子と聞くと皆おびえるが
しっかりと躾をされたマリモは
決して人間を襲うようなことはなく
忠実な番犬?になっていた


もちろん
雪乃の言う事は絶対で
宮にいるときは片時も傍を離れることはない
< 233 / 319 >

この作品をシェア

pagetop