学生さん
最終章
     FIN
 その日丸一日、あたしたちは海辺にいて、潮風を受けながら寛ぎ続けた。


 辺りが暗くなった後、自転車に乗り、ライトを照らして、遅い時間帯に自宅へと帰り着く。


 あたしと謙太が途中の十字路で別れ際に、


「じゃあまたね」


「またな」


 と言い交わし合って夜の道を行ったのを未だに記憶している。


 そして月日が流れた。


 三年後の春、あたしは開告大文学部大学院の博士課程を修了した。


 所定の単位を取り終え、四百字詰原稿用紙換算で八百枚の博士論文を提出して、院の卒業式に臨む。


 これは単なる通過点に過ぎない。


 二十七歳の春があたしの出発点なのだった。

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