学生さん
「今、プロ作家でもなかなかまとまった印税が入ってこないらしいからね」


「それ誰から聞いた?」


「あたしも文献読む合間に、買い込んでる文芸雑誌なんかを読んでるの。雑誌には一杯書いてあるわよ。その手のことが」


「さすがに作家が本業じゃなくて、副業で暮らす時代だからな」


「そうよ。だから謙太だって、相当な量の原稿書かないと生活できないし、食べていくための仕事が何か必要よ」


「ああ、分かってる。新人賞獲るのはそのための布石(ふせき)だし、連載なんかもらったら飛びついて書くよ。せめて原稿料だけでも暮らしていくための原資にはなるだろうし」

 
 謙太がそう言って笑った。


 あたしも釣られて笑う。


 砂が熱くなってきつつあった。


 あたし自身、院での授業には欠かさず出席している。


 それにカサ研には入り浸っていた。
< 99 / 200 >

この作品をシェア

pagetop