モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語



「・・・遥ー。」

海はむなしく、遥の名を呼ぶ。

「もしかして、迷子?」

聞き覚えのない声に顔をあげれば、

知らない男の子が自分を見ていた。


「・・・誰ですか?」

「山崎蒼太。」

どことなく遥と似てると思いつつ、海は自分の名前も名乗る。

「山崎、くん。」

「蒼太でいいよ。

で、海サン迷子でしょ?」

「え、ああ・・・まあ、そうかなあ。」

曖昧に返事をすれば、蒼太は少し考えて海を見た。

「どうせだし、一緒に探さない?」

下心はない。

一人で人を探すより二人でいたほうが楽しいと思ったからだ。

それに、海の雰囲気が気に入った。


「蒼太君も迷子?」

「あー、うん。」

「なら、一緒に探そ。」

自分より少し低い身長の彼に優しく笑いかければ

彼は頬を赤く染めた。



「でも、買い出ししながらでもいい?」

頼まれてて、というと蒼太は頷いた。

「俺もいろいろ見たかったし、全然いいよ。」

「ありがと。」

メモを見て、海と蒼太は近くの店に入っていった。




「何買うの?」

「肉、としか書いてない・・・。」

「じゃ、コレでいいじゃん。」

肉だし、と言って蒼太は豚肉を指さした。

「う、うん。」

いいのかな、と思いつつカゴに肉を入れる。

「そういえば海さんは誰を探してんの?」

「双子の弟だよ。」

「双子だったんだ?」

「うん、蒼太くんは?」

「友達と姉ちゃん。

明日祭りだから、ばあちゃんの家に泊まりに来たんだけど

商店街通った瞬間全員とはぐれた。」

「・・・た、大変だね。」

はあ、とため息をつく蒼太を見て海は苦笑した。





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