モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語


「なるほど、だから海ちゃんが冬樹の家に帰るんだね。」


「冬樹!」

せっかく海だということをバレないように誤魔化したのに、

これじゃあ意味がない。

遥は冬樹をにらんだ。

彼はしてやったり、という表情で遥は見る。


「え?うみちゃんって言うの?」

理子は海に視線をうつす。

「え、あ、うん。」

「なんか、遥君と三守君のクラスにいる筧さんと同じ名前だよね~。」

「偶然だよ偶然!」

理子は、彼女が筧海だとは微塵にも思っていないらしい。

それに遥は安心し、冬樹がつまらなそうな顔をした。

冬樹は遥と海がただの親戚ではないことに薄々感づいてきている。



「じゃあ理子、そろそろ帰れよ。結構暗いし。」

「うん、そうするね。じゃあみんな、また明日ね~!」

理子は3人に手を振り、背中を見せた。

冬樹は何か言いたそうな顔をしたが、ふう、とため息をつき

じゃあ俺も帰るよ。と言った。


「あ、佐々木さん。俺も帰りこっちだし送ってくよ。」

「え、いいわよそんなの。」

「いや、危ないしね。送ってく。」

「そう?じゃあ、よろしく。」

冬樹は海と遥に綺麗な笑みを向けて、理子と一緒に帰って行った。

なんだか嵐が去ったあとのような感覚に

残された二人の間に沈黙が走る。
< 49 / 206 >

この作品をシェア

pagetop