モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語
「なるほど、だから海ちゃんが冬樹の家に帰るんだね。」
「冬樹!」
せっかく海だということをバレないように誤魔化したのに、
これじゃあ意味がない。
遥は冬樹をにらんだ。
彼はしてやったり、という表情で遥は見る。
「え?うみちゃんって言うの?」
理子は海に視線をうつす。
「え、あ、うん。」
「なんか、遥君と三守君のクラスにいる筧さんと同じ名前だよね~。」
「偶然だよ偶然!」
理子は、彼女が筧海だとは微塵にも思っていないらしい。
それに遥は安心し、冬樹がつまらなそうな顔をした。
冬樹は遥と海がただの親戚ではないことに薄々感づいてきている。
「じゃあ理子、そろそろ帰れよ。結構暗いし。」
「うん、そうするね。じゃあみんな、また明日ね~!」
理子は3人に手を振り、背中を見せた。
冬樹は何か言いたそうな顔をしたが、ふう、とため息をつき
じゃあ俺も帰るよ。と言った。
「あ、佐々木さん。俺も帰りこっちだし送ってくよ。」
「え、いいわよそんなの。」
「いや、危ないしね。送ってく。」
「そう?じゃあ、よろしく。」
冬樹は海と遥に綺麗な笑みを向けて、理子と一緒に帰って行った。
なんだか嵐が去ったあとのような感覚に
残された二人の間に沈黙が走る。