モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語


ガラ、

しばらく3人で話していると海が教室に入ってきた。

いつもどおり女子の暴言が飛び交う。

海は対して気にしていない様子で自分の席につく。


「おはよう、筧さん。」

冬樹は何のためらいもなしに海にあいさつをする。

これにはクラス全員が驚いた。

海ははっとなり顔をあげて目を大きく見開いている。


「おはよう、筧さん。」

もう一度冬樹が挨拶すれば海は小声で お、おはよう と言った。



「冬樹君、なんでこんな奴にあいさつしてんの?」

「そーそー、冬樹君は優しすぎなんだよ。」



「クラスメイトだし、あいさつくらいしてもいいだろ?」

「お前発言までイケメンだなあ!」

健二は俺には真似できねーわ!と大声をあげた。

クラスメイト(主に女子)が、きゃあきゃあ騒ぎ出し、

やっぱり冬樹君はすごい!だの、王子様!だの、口々に褒める。

それを聞いて冬樹は恥ずかしそうに頬を染めた。


「・・・。」

一方、遥も冬樹を見て衝撃を受けた。

自分にはこんな勇気はない。

いじめを受けている海に、自ら進んであいさつなんてしたくないし、

関わりたくもない。

「冬樹、俺、尊敬するよ」

「え?何言ってるの遥まで」

「いや、マジで。」

遥はちらりと海に視線を向けた後、冬樹に笑顔を見せた。

冬樹になら、海と双子だってことが知られてもいいかもしれない。

そう思った。
< 9 / 206 >

この作品をシェア

pagetop