モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語



「はぁ、はぁ・・・なんか、今日のコース坂道多いっ!」

先頭を走る部長の後ろで、健二が言った。

すぐ近くで走る遥は そうだな、とまだ余裕そうな表情だ。


「無駄口をたたくな!その分体力が消耗するぞ!」

「はーい。」

部長の言葉に素直に従い、その後は静かにしていた。

そのまま、坂道を上り部員全員の体力が消耗してきたころ。

後ろで必死で自転車をこいでいた海に異変があった。


「っえ!?」

下り坂のとき、ブレーキをしながらゆっくり下ろうと考えてブレーキをかけるが

きかない。

キィィ、という音だけが鳴り響く。

「っどいてぇええ!」

海はできるかぎり叫んだ。

驚いた部員達が立ち止り、海を見る。

後ろが騒がしくなっていることに気づき、部長は立ち止る。

それにあわせて遥と健二も止まり、振り向いた。



「海!?」

「え?地味子!?」


「どいて!ブレーキがっ、」

何かを言っているがうまく聞き取れない。

こちらに向かってくる。

しかし、このまま海がまっすぐ突っ切れば目の前は湖。

確実に落ちる。


「あの自転車、去年壊れたものじゃないか!」

永田が驚いた表情を見せた。

「マジで?!」

健二はやばいだろ、どうすんだよ!と声を張り上げる。


「っ、」

遥は咄嗟に行動にでた。

高速で向かってくる、海が乗る自転車を素手で受け止めようとしたのだ。
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