シュークリーム
「本当なら今日は定時に帰れる予定だったので、これでも遅いくらいなんですよ」


「そうだったんですか。それは、お疲れ様でした」


肩を竦めて苦笑すると、多岐川さんがフッと笑った。


「じゃあ、甘い物でも食べて疲れを取らないといけませんね」


「そうしようと思ったら、ここに足が向いちゃったんです」


閉店前の静かな店内に併設されているカフェを横目に、ショーケースの中を覗き込む。


最初に視界に入って来たのは、スクエア型のショートケーキ。


私は、ガラスの向こうでひとつだけ残っていたそれを選んだ──。

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