エルタニン伝奇
「ラス様は、何故イヴァンに惹かれるのですか?」

上手く言う自信がなく、メリクは逆に質問した。
ラスは自分でも驚くほど、素直に目的を語る。

「氷の美姫というのを、知っているか?」

メリクはきょとんとする。

「イヴァンのどこかに、氷に封じられた美姫が存在するというんだ。噂の類だがな。姫については諸説あるが、中にエルタニンの姫君だという説がある。それに、興味がある」

---氷の美姫---

メリクの心に、波紋が広がる。

「エルタニンを出航してから、イヴァンから密書がきた。今回の軍は、どうやらイヴァンの‘氷の美姫探索隊’への参加要請のようだな。出かけた者は、誰も帰らないという、過酷なものだ。イヴァンもまさか、王自らが出向いてくるとは思ってなかったから、焦ったのかな。自国の者は行きたがらないから、他国の者に協力を要請せざるを得ないのだろうが、あくまで秘密裏。イヴァン国境で迎えの軍と合流するまで、他言は無用だそうだ。怪しいじゃないか。俺が行かないと、運良く氷の美姫なる者を見つけても、エルタニン軍はイヴァン軍によって、全滅させられるかもしれない」

王がいれば、そう簡単に手出しはできんだろう、と言うラスは、ちらりとメリクを見て続ける。
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