エルタニン伝奇
第四章
真夜中、ラスは暗闇の中で目を開けた。
身体は一切動かさず、神経だけを尖らせ、部屋の中の気配を探る。

しばらくして、静まり返った室内に、ぎし、という寝台の軋む音が、微かに響いた。
横を向いているラスの背後に、明らかな人の気配を感じる。

ラスは気配だけで相手の動きを読み、くせ者が覆い被さってくる直前に、枕の下に入れた手を引き抜いた。

「何者だ」

抜いた宝剣を相手の喉元に押しつける。
小さく息を呑む音が聞こえた。

ラスは剣を退かないまま、起き上がった。
部屋の中は真っ暗だが、特に不都合はない。
夜目が利く、というわけではないが、いつでも決して剣を離さないように、常に身体は緊張している。
いつ、どんな状態で襲われても、対応できるような身体になっているのだ。

目の前のくせ者は、見覚えのない女だった。
顔立ちはなかなか整っているようだが、ラスの心は、そんなことでは動かない。

鋭い濃紺の瞳に射抜かれ、女はごくりと生唾を呑み込んだ。

「何者だと聞いている。エルタニンの者ではないな。この国の者か?」

剣の切っ先で、ぐい、と女の顎を上げる。

「・・・・・・ま、恐ろしい。このような夜に、殿方のお部屋に入り込む理由など、わかりきったことではありませんか」

引き攣りながらも笑みを浮かべ、女は喉元に切っ先を突きつけられたまま、己の腰に手をやった。
自ら帯を解き、身にまとっていた薄衣を落とす。
白い裸体が、闇に浮かび上がる。
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