十人十色~君の声を聞かせて~
「お、おじゃまします……」
俺はおそるおそる入る。
佐々木さんはピアノの前の椅子に座った。
俺はそのすぐそばまで行く。
と、佐々木さんが話し始める。
「わたしね……もうピアノ弾けなくなるかもしれないんだ」
「…………!」
いきなり何を……?
「わたし、そういう病気みたいでね、もう治らないんだって。不治の病ってやつ」
微笑みながら佐々木さんは続ける。
もう、慣れきってしまったかのような、そんな微笑み。